2012年4月6日金曜日

犬の飼い方と病気:皮膚病について


          ■かゆがる動作に注意
          ■乾燥するとかゆみが悪化する
          ■環境の乾燥を防ぐ方法
          ■かゆがり方をチェック
          ■かゆがる原因について
          ■最も多いノミのアレルギー
          ■食事との関係も調べる
          ■犬の特徴と皮膚病
          ■清潔を心がけよう
■かゆがる動作に注意 犬の皮膚病は非常に多い病気です。皮膚を1つの臓器と考えれば、皮膚はまさに最大の臓器です。そして、皮膚は「臓器の鏡」とも言われるくらいですから、皮膚病は動物医療では重要な位置を占めています。

皮膚病と言えば、犬がかゆがることを連想する人が多いでしょう。たしかに、統計的には、動物病院に連れてこられた皮膚病の犬の50%以上がかゆみを伴っているとされています。

一般に、犬がかゆがる動作は4つに分けられます。「嘗める」「咬む」「吸う」「引っかく」です。これらの4つの動作は、かゆがる部位によっても違ってきますが、どの動作をするかということも、病気の程度の判定、診断、治療の助けになります。

皮膚病でかゆみがひどくなると、犬はいらいらし、精神状態がおかしくなります。そうすると、むやみに咬みつくようになる場合もあります。ですから、かゆみを伴う皮膚病は重症にならないうちに発見し、治療を心がけることが大切です。

■乾燥するとかゆみが悪化する かゆみが悪化する主な原因は4つあります。一番多い原因は、皮膚が乾燥していることです。それから、環境の温度が高く乾燥していること、生活に変化がなく犬が退屈していること、ストレスのために落ち着かない状態にあることです。

通常は、これらの4つの原因がいくつか重なりあって、かゆみを悪化させます。犬の皮膚が乾燥しているときは、ベビーオイルなどを薄めて塗ってあげるとよいでしょう。塗る間隔は週に2〜3回くらいで、軽く塗ります。多量に塗ると皮膚がべたつきますので、注意しましょう。また、犬が退屈していたり、ストレスがあるときは、飼う環境を変化させる必要があるかもしれません。


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■環境の乾燥を防ぐ方法 かゆみが悪化する4大原因のうち、環境因子の観点から見ると、以下の3つの原因があります。

 @皮膚の体温が上昇していること
 A皮膚が乾燥していること
 B空気が乾燥していること(湿度が低い)

かゆみの治療には、これらの環境因子の改善も重要になります。これらの改善の方法は家庭でもかなり応用できますので、ぜひ覚えておいてください。

 @について、体温が上昇するとかゆみが悪化することは、夏になるとかゆみが強くなることでわかります。対策をしては、犬の住環境を涼しくすることです。室内では、クーラーのある部屋 、室外では風通しがよく涼しい場所に犬を移してあげてください。

 Aについては、ベビーオイルなどを皮膚に少量塗って、乾燥を防ぐことができます。ベビーオイルを水で5〜10倍に薄め、1日に1度くらい、霧吹きで皮膚に吹きかける方法もあります。また、皮膚の感染を少しでも防ぐ意味で、お酢を10倍くらいに薄めて、霧吹きで1日1回吹きかけると、かなりの効果が上がることがありますので、ぜひ試してみてください。ただし、犬が少しお酢くさくなります。

 Bでは、室内犬の場合、加湿器などで室内の湿度を高める方法があります。室外では、犬のいる周辺に水をまいたり、犬の皮膚に霧吹きで水を吹きかけ、湿度を上げるとよいでしょう。

犬の環境の改善は、飼い主の方の努力次第で可能になります。場所を変えた� �、犬と遊ぶ時間をつくったり、散歩にきちんと連れていったり、あるいは気の合う仲間を(ペットにペットを!)もう1匹増やすこと考えられます。

犬がかゆがっていたら、いま述べた3つの点をチェックし、悪い点があれば改善するようにしてください。もちろん、最も重要なことは、原因となっている病気自体を治療することです。


■かゆがり方をチェック 動物がかゆがっている原因を鑑別するために、獣医師は通常いろいろな質問をします。たとえば、いつからかゆがり始めたか、どこを一番かゆがるか、どんなときにかゆがるか、どの季節にかゆがるか、どの程度かゆがるか、急にかゆがり始めたか、徐々にかゆがるようになったかなどの質問です。

まず、いつからかゆがったかということですが、皮膚病の病変が起こってからかゆがる場合と、かゆがってから病変が起こる場合に大きく分けられます。この違いが分かるだけでも、病気の鑑別にかなり役に立ちます。

かゆがってから病変が起こったのであれば、かゆがる前は皮膚は正常だったわけです。このように正常な皮膚をかゆがる場合、原因は皮膚のなかにあります。この原因は通常、アレルギーです。アレルギーの場合は� �皮膚の病変と同時に、あるいは病変より先にかゆみが起こります。これとは逆に、病変が起こってからかゆがる場合は、まず寄生虫や外傷があり、そこから細菌などが侵入して、かゆくなることが考えられます。かゆがる季節も、原因の鑑別には重要です。たとえば暖かい季節に特に尻尾の部分をかゆがれば、ノミのアレルギーが疑われます。

あるいは、毎年周期的にかゆみが顔や額に集中していれば、アトピー性皮膚炎が疑われます。アトピーは夜にかゆがることが多いのも特徴です。また、薬物が原因でかゆみが起こることもあります。もし愛犬が薬物を服用していれば、そのことを獣医師に報告しましょう。

■かゆがる原因について 通常、獣医師はかゆみのある動物に対して、まず第1に寄生虫感染を疑います。2番目に細菌感染、3番目にはカビによる感染、4番目にはアレルギーを疑います。

検査方法としては、動物がかゆがっている場所の皮膚の一部を削り取って、顕微鏡などで調べます。そして、寄生虫が見つかれば寄生虫感染、細菌が見つかれば細菌感染、カビが見つかればカビによる感染であることがわかります。また、カビの場合には、通常、特別な培養検査などが必要となります。このような検査を何度か行なった結果、寄生虫感染、細菌感染、カビによる感染のいずれもが認められない場合は、アレルギーを疑います。


かゆみの原因の判定法で、飼い主の方が覚えておくと便利な簡単な方法があります。それはかゆがる場所によるものです。もし、動物が体の前の部分をかゆがればアレルギーが考えられ、体の後ろの部分をかゆがれば寄生虫感染、特にノミのアレルギーが考えられます。

■最も多いノミのアレルギー 皮膚病の原因で最も多いのは、寒い季節と寒い地方を除くとノミのアレルギーです。これは、ノミに咬まれることにより、ノミの唾液中に含まれる物質に対してアレルギー反応を起こし、その症状として皮膚病を起こす疾患です。ただし、ノミが多数寄生していても、まったくかゆがらない犬もまれにはいます。

ノミのアレルギーについては、最近すぐれた薬品がいろいろと開発されています。そのなかでも、卵から成虫までの発育を止めてしまう(ノミの遺伝子を操作することによる)まったく新しいタイプのスプレーが開発され、ごく最近発売されました。これは従来では考えられなかったノミ防止の方法で、高い効果が期待できます。これまではいろいろな治療法を適用しても、さほどの効果が上がらないことが多かったようです が、そろそろ解決の目途が立ったようです。長年の夢であった「獣医師とノミとの戦い」も、そろそろ最終段階に入ったと言えるかもしれません。

次に多いアレルギーは、アトピー性皮膚炎です。これは呼吸するときにアレルゲン(アレルギーの原因となる物質)を吸い込み、それに対するアレルギー反応が起こる病気です。アレルゲンとしては、ハウスダスト(ほこり)、カビ、ダニ、花粉、羽毛、ウールなどがあげられます。

かゆみの出る主な場所は、眼の周辺、耳、足、前肢の付け根、背部、会陰部、肛門周辺ですが、ひどくなると全身に及びます。また、アトピーの特徴として、50〜80%の犬が外耳炎を発症します。これはほとんどの場合、両方の耳に発症します。

治療は通常、ステロイド剤をうまくコントロールし� �使用したり、抗ヒスタミン剤、脂肪酸、ホルモン剤などを組み合わせて使用しますが、コントロールがなかなか容易ではない場合もあります。


■食事との関係も調べる 皮膚病は食事とも関係があります。動物がかゆがっている場合、少し前に食事を変えなかったかどうかも考えてください。いつも脂っこい食事をしている場合、タンパク質が不足しているとき、食べ過ぎている場合なども、皮膚病に対する抵抗力が低下することがあります。

また、食事のアレルギーも考えられます。これはアトピーに次いで3番目に多いアレルギーです。これは食事の過敏症とも言え、何らかの食べ物がアレルゲンになり、これに対して抗体がつくられて、反応が起こります。

食事アレルギーの原因になりやすい食べ物としては、牛肉、牛乳、大豆、小麦、卵、馬肉、鶏肉、トウモロコシ、豚肉などがあげられ、これらの食べ物に含まれるタンパク質がアレルゲンになります。通常、かゆがる部位は顔面、頭部、耳� ��頸部、肛門周囲などですが、全身に及ぶこともあります。

食事アレルギーを治療する場合、アレルギーの原因とならない食事を与えます。動物病院には、アレルギー用の特別な食事が用意してあるはずですので、獣医師の指示に従って与えるとよいでしょう。

■犬の特徴と皮膚病 犬種、性別、年齢などの特徴と皮膚病との関係も大切です。まず、犬種によって特に発症しやすい皮膚病があります。たとえばアレルギー性の皮膚病や腫瘍などはテリア種に多く、スパニエル種はいろいろな腫瘍や外耳炎が多い と言われています。

年齢では、1歳以前に起こる病気としては、毛包炎、皮膚真菌症などが多く、1〜3歳ではアトピーや脂漏症、6歳以上では内分泌性疾患や腫瘍が多くなります。性別ではホルモンに関係した病気があります。一般には、オスでは肛門周囲線腫(肛門の周囲のできもの)、避妊手術をしていないメスでは、ホルモンのバランス失調による皮膚病が見られることもあります。


■清潔を心がけよう 皮膚病は非常に多い病気であり、また治りにくい病気ともいわれています。悪化すればさらに治療が長引き困難になります。一般に、皮膚病の治療法は一定ではありません。獣医師は身体検査後にいろいろな検査をし、考えられる原因のリストをつくって、最も当てはまると思われる原因を推定し、治療を進めます。

 犬の皮膚病を予防し、かかった場合も早めに効果的に治療するには、飼い主の努力も必要で、犬の体と環境の清潔を心がけることが非常に重要です。そのことを忘れないようにしましょう。



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